物の向きで高級感が変わる? 無意識な情報プロセスを行動経済学が解釈!

以下にある時計の広告。ぱっと見て、同じ時計だとお気づきだと思います。ただ唯一違うのは時計の向きです。もしあなたが、どちらかの広告を採用するか決めなければいけないとしたら、どちらを選びますか?

行動経済学の観点から検証してみましょう。

アメリカで名高い学術雑誌のJournal of Consumer Researchの論文(Peracchio, L. A., & Meyers-Levy, J. 2005)によると、左の広告の方が権威と贅沢感を高めることが示されています。

なぜでしょうか?その答えは、「概念比喩理論」です。 




概念比喩理論(Conceptual Metaphor Theory)

概念比喩理論は、比喩が単に修辞技法や言葉の綾ではないことを証明します(Lakoff & Johnson, 1980; 1999)。これらの比喩的な連想は、人々が抽象的な情報を理解するために、一般的に共有された感覚・フィーリングや具体的知識を使用することを可能にします。つまりは、垂直向きのものを見たときに無意識に起こる「他人より上にたつ」、「出世する」、「優位性」といった感覚を、もっと具体的に「この時計は高級品に違いない」と解釈するのです。  

これらの情報プロセスは無意識下で起こるため、自分では気づかないうちに左の時計のほう右の方より高級感があると感じるのです。

垂直性はほかにも重力に逆らい上昇する忍耐力と強さを無意識に示唆するとの調査結果もでています。

他にも、概念比喩理論を製品のデザインに取り入れているケースもあります。例えば背の高い細長いボトル(写真左参照)は、コンパクトなボトル形状(写真右参照)よりも高級であると認識される (Van Rompay & Pruyn, 2011)。

他にも2009年のネスプレッソの「ハイデザイン」キャンペーンでは、空高くそびえる高層ビルの背景の中にコーヒーメーカーを置き、一般的に高級感の低いカプセルコーヒーに高級感のある高層ビルの魅力を投影させています(Van Rompay et al.、2012)。

このような概念比喩理論の現象は無意識下で起こるため、消費者からの声に基づいての調査でも理解できないため、行動経済学の知識が必要となります。

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